一度は「これはすごい」と思ったはずです。なのに、いざ業務に載せる話になると、誰も「これでいきます」と言えない。動くところまでは行った。でも、本番には乗らない。
「AIは便利。でも、うちの本業には無理」──多くの会社が、そのあたりで止まっています。
先に白状すると、私も最初は全部AIに任せて、結局人が全部見直していました。止まる原因は、AIの能力ではなく、探している場所でした。そしてFable 5やGPT-5.6 Solの世代で、探す場所そのものが入れ替わりました。自社の実運用の中身を開けて説明します。
Q01なぜ「AIを業務に入れる」検討は止まるのですか?
AIの出力は、同じ指示でも毎回揺れるためです(専門的には非決定論と言います)。業務は同じことを頼んだら毎回同じ結果が出るほうがよく、AIを業務の柱に据える設計は「柱が勝手に動く前提」を抱え込むことになります。
人と話している分には、答えが毎回違うのは楽しい性質です。でも業務は逆で、同じことを頼んだら毎回同じ結果が出るほうがいい。
しかもこの揺れは、一回ごとの話では済みません。提供側がモデルを入れ替えると、こちらが何も変えていないのに挙動が変わります。
毎回ブレるのは、性能ではなく造りの話です。だから止まる原因は、AIの能力ではありませんでした。
Q02では、AIはどこに置けばいいのですか?
業務に置くのは「毎回同じ結果が出る仕組み」のほうです。AIは、その仕組みを作る側に置きます。どうしてもAIでないと無理な一部だけを、仕組みの中に残します。
- ✕ AIを、業務のどこに入れるか探す
- ○ 毎回同じ結果が出る仕組みを、AIに作らせる

これは少し前までは理想論でした。変わったのは、2026年に入ってからの数か月です。設計から実装まで任せて、そのまま動くものが返ってくる場面が普通になりました。
Q03実際の運用は、どうなっていますか?
私のブログ運用(2026年7月時点)では、人が決めるのは記事の骨子1箇所、AIが担うのは文章化とSNS文面の2箇所だけです。残りは764行のプログラムと、時間になったら動くスケジュール登録13件が、決まった手順として実行しています。
このブログの運用は、記事を出すところから反応を集めるところまで、ほぼ自動で回っています。ただし、全部AIがやっているわけではありません。内訳はこうです。
- 私が決める:記事の骨子(1箇所)。何を、誰に、どの順で伝えるか。ここは渡さない
- AIが担う:骨子を文章にする/Xの文面を考える(2箇所)
- 残りは全部プログラム:764行+時間になったら動く登録13件(2026年7月時点)
投稿、配信、Xでの3段階の展開、反応データの収集。どれもAIは通っていません。そしてこの764行を書いたのは、私ではなくAIでした。

Q04「人が判断している仕事」は自動化できますか?
多くの場合、できます。「人でないと決められない」の多くは、決められないのではなく、まだ言葉にしていないだけだからです。言葉にできた瞬間、それはAIに任せる対象ではなく、AIに作らせる対象に変わります。
764行の中に、私がいちばん驚いた工程があります。毎週月曜、「先週いちばん反応が良かった記事」を私が選んでいました。スキの数、Xの表示回数を眺めて、なんとなく決める。判断の仕事だと思っていたわけです。
自動化しようとして、まず自分が何を見て決めているのかを書き出してみました。見ていたのは、2つの数字の比較だけでした。
そのまま条件として書けたので、いまは自動で決まります。月曜の判断作業はゼロです。これ、他の会社の業務にもある気がしています。
Q05「自動化した」と「見直し作業が増えた」の違いは何ですか?
全部AIに任せると、同じ指示でも毎回出来上がりが違い、結局人が最後まで見直すことになります。それは自動化ではありません。分岐点は「全部を人が見る」から「おかしいものだけ機械が見つける」への転換です。
正直な話です。全部AIに任せていた頃は、毎回私が最後まで見直していました。あれは自動化ではなく、見直し作業が増えただけでした。
いまは投稿したあと、見出しの数、太字の数、画像の数を機械が数えて確認しています。数えているだけ。高度なことは何もしていません。
ひとつ注意点を。AIに「ちゃんとやりましたか」と聞いてはいけません。やっていなくても「やりました」と返ってきます。
Q06今日から何を始めればいいですか?
止まっている案件で「人が判断している」と思っている工程を1つ選び、その人が何を見て決めているかを箇条書きで書き出してもらってください。書き出せた分はAIに作らせる対象、書き出せなかった分だけがAIの担当です。
- 止まっている案件で、「人が判断している」と思っている工程を1つ選ぶ
- その人が何を見て決めているかを、箇条書きで書き出してもらう
- 書き出せた分は「毎回同じ結果が出る仕組み」としてAIに作らせる
- 書き出せなかった分だけを、AIの担当として仕組みの中に残す
この作り方は、費用にも効きます。先に仕組みを作らせてしまえば、動かすたびにAIを呼ばなくて済むからです。
AIを入れる場所を探す仕事から、AIに仕組みを作らせる仕事へ。正解はもう、入れ替わっています。
よくある質問(FAQ)
- Q. AIをそのまま業務に組み込むと、なぜ失敗しやすいのですか?
- A. AIの出力は同じ指示でも毎回揺れるため(非決定論)、業務の柱に据えると「柱が勝手に動く前提」を抱え込むことになるからです。さらに提供側がモデルを入れ替えると、こちらが何も変えていないのに挙動が変わります。
- Q. 「AIに仕組みを作らせる」とは、具体的に何をすることですか?
- A. 毎回同じ結果が出るプログラムや手順の設計・実装をAIに任せ、業務にはその仕組みのほうを置くことです。筆者のブログ運用では、毎週動いている764行の自動化プログラム(2026年7月時点)をAIが書き、業務の中でAIが担うのは文章化とSNS文面の2箇所だけです。
- Q. 人の判断が必要な業務かどうかは、どう見分けますか?
- A. 判断している本人に、何を見て決めているかを箇条書きで書き出してもらいます。書き出せた分は条件としてプログラム化できる対象、書き出せなかった分だけがAIの担当です。筆者の場合、「判断」だと思っていた記事選定は2つの数字の比較だけでした。
- Q. 自動化した仕組みの品質は、どう担保しますか?
- A. 「全部を人が見る」のではなく「おかしいものだけ機械が見つける」検証を置きます。筆者の運用では、投稿後に見出し・太字・画像の数を機械が数えて確認しています。なお、AI自身に「ちゃんとやりましたか」と聞くのは無意味です。やっていなくても「やりました」と返ってきます。
- Q. この作り方は、AIの利用コストにも効きますか?
- A. 効きます。先に仕組みをAIに作らせてしまえば、業務を動かすたびにAIを呼ばなくて済むため、AIの呼び出し回数そのものが減ります。
AUTHOR

黛 政隆(まゆずみ まさたか)
株式会社GembaShift 代表取締役CEO
エンジニア歴20年、PM経験50件超。生成AIの導入を、現場に入って一緒に組む仕事をしています。 この記事の内容は、著者自身が実際に手を動かして業務で検証した実体験に基づいています。