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FIELD NOTES / DOUBLE ENTRY

二重入力はAIでなくせるのか?──真面目な人がいちばん疲れている構造と、地味な3つの解き方

公開日 最終更新日 著者: 黛 政隆(株式会社GembaShift 代表取締役)

業務改善のヒアリングをしていると、毎回同じ景色を見ます。午前中にAシステムを開いて顧客情報を入れ、午後にもう一度Bシステムを開いて、まったく同じ情報を打ち直している人がいる。

しかも、いちばん律儀にこれをやっているのは、いつも決まって真面目な担当者です。「Aだけに入れて、Bが空欄だと後で誰かが困るかもしれない」と思って、両方に入れてくれる。横で見ていると、その人の1日の入力時間の半分くらいが、純粋な転記作業に消えています。

この記事では、二重入力がなぜ生まれるのかと、AIを使った地味で確実な解き方を書きます。

Q01同じ情報を2つのシステムに入力する仕事は、AIでなくせますか?

なくせます。ポイントは、システムを入れ替えるのではなく、転記だけを裏側の仕組みに任せることです。今の画面も現場の操作もそのままで、裏側でAIがもう一方のシステムの項目を埋める形にできます。

まず押さえたいのは、これが個人を変える話ではなく、仕組みを変える話だということです。二重入力は、現場のサボりではなく、設計のサボり。ここを取り違えると、一番頑張っている人が一番損をする構造がずっと残り続けます。

業界は問いません。製造でも、卸でも、サービス業でも、見える景色はほぼ同じです。御社でも起きていないか、部門をまたぐ業務をひとつ思い浮かべてみてください。

Q02なぜ二重入力は、生まれるのですか?

誰かが設計したのではなく、部門ごとの真面目さが足し算された結果です。営業は自部門に必要だからAシステムに項目を増やし、経理は管理強化のためBシステムに増やし、品質は念のためCシステムに欄を足す。一つひとつの判断は正しくても、横から見ると「同じ情報を2回入れる景色」になります。

部門ごとの項目追加が二重入力を生む構造の図解
部門ごとの項目追加が二重入力を生む構造の図解

各部門は最適化したつもりです。ただ、全社で見ると、真面目な人の手が足りなくなる。正直者がバカを見る仕組みを誰かが意図して作ったわけではなく、部門ごとの真面目さが足し算されただけでこうなります。

Q03フォーマットがバラバラな帳票でも、AIは転記できますか?

できるようになりました。以前は「フォーマットが揃っていれば自動化できる」が常識でしたが、いまはPDFやメール、自由フォーマットの帳票を、AIが「意味で項目を読み取って」別システムに流し込めるレベルに来ています。

重要なのは、新しいシステムに入れ替える話ではないことです。今の画面はそのまま、現場の人の操作もそのまま。裏側で目に見えない誰かが、もう一方の画面の項目を勝手に埋めてくれる感覚です。

Q04AIへの転記の頼み方に、コツはありますか?

一発で頼まず、3つに分けることです。「まずPDFから項目を抜いて」「次に意味でマッピングして」「最後に転記先の形に整えて」。遠回りに見えますが、こちらのほうが圧倒的に正確で、結果的に速くなります。

以前の私は、PDFを渡して「これをBシステム用に整えて」と一発で頼んでいました。これだと、たまに項目を取り違えます。AIに丸ごと任せるより、「考える単位」で分けて順番に処理させるほうが安定する──毎日触っていてようやく腹落ちした感覚で、教科書通りに最初からできたわけではありません。

Q05システムを統合しないと、解決しませんか?

統合は不要です。最初に触るシステムを1つ決め、転記を1本だけ自動化し、項目を1つだけ削る。それだけで現場は変わり始めます。完璧な統合プロジェクトは、完璧を目指している間に時間が溶けがちです。

  1. 最初に触るシステムを1つ決める:「どっちが本体か」「どっちが古いか」の議論がほぼ消える。決め方は部門合議ではなく、業務の流れで自然に最初に触られる画面の観察
  2. 転記は、人ではなく裏側の仕組みに任せる:AIが意味で項目を読み取って、もう一方に流し込む
  3. 入力項目を増やすときは、必ず1つ削る:いちばん効いて、いちばん守られないルール。「念のため」「管理強化のため」と出たら「では、どれを削りますか?」と必ず聞く
二重入力解消のBefore/After対比図解
二重入力解消のBefore/After対比図解

二重入力をなくすと、現場でいちばん喜ぶのは真面目な人です。浮いた時間で、顧客と話す、ミスを見つける、後輩にナレッジを渡す──本来やってほしかった仕事が動き始めます。「効率化」より「真面目な人を守る」というフレームのほうが、現場には届きます。

よくある質問(FAQ)

Q. 担当者に、もっと効率よくやってほしいのですが。
A. その見方が、いちばん筋違いになりやすいところです。担当者は組織のルールに従順なだけで、責めれば頑張っている人の心が折れます。個人ではなく、二重入力を生んでいる設計側を直してください。
Q. どの業務から手を付ければいいですか?
A. 部門をまたぐ業務を1つ選び、そこで触られている画面を全部書き出してみてください。同じ情報を入れる画面が3つ以上ある業務は、ほぼ当たりです。その中で一番痛い転記を1本だけ自動化するのが最短です。
Q. 「最初に触るシステム」は、どう決めますか?
A. 部門合議では決めません。業務の流れで、自然に最初に触られる画面はどれかを観察すれば、だいたい1つに絞れます。残りは後から追従する側だと割り切ります。
Q. 入力項目を増やしたいという要望が、また来たら?
A. 「では、どれを削りますか?」と必ず聞いてください。削るのが嫌なら増やさない。このシンプルな約束を運用ルールに入れるかどうかで、数年後の現場の負荷が変わります。

AUTHOR

株式会社GembaShift 代表取締役CEO 黛 政隆

黛 政隆(まゆずみ まさたか)

株式会社GembaShift 代表取締役CEO

エンジニア歴20年、PM経験50件超。生成AIの導入を、現場に入って一緒に組む仕事をしています。 この記事の内容は、著者自身が実際に手を動かして業務で検証した実体験に基づいています。

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