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FIELD NOTES / AI ERA VALUE

AIが24時間働く時代、人間の価値はどこに残るのか?──最後に残る仕事は「ゴールを置くこと」

公開日 最終更新日 著者: 黛 政隆(株式会社GembaShift 代表取締役)

この1年で、私の仕事はずいぶんAIに渡せるようになりました。文章を書くのも、資料をつくるのも、開発も。私が寝ている間も、AIは走っています。

それで気づいたことがあります。任せられる範囲が広がるほど、最後に残った仕事は一番人間くさいもの── 「ゴールを置くこと」 でした。

「AIで人の価値はどうなるのか」に自分の答えを持ちたい経営者の方、そして経験の浅さが不安な若手の方に向けて、この話を書きます。

Q01AIが24時間働く時代、人間の価値はどこに残りますか?

「ゴールを置く力」に残ります。分解すると、その分野で積んだ経験と、相手の立場を理解する泥臭さの掛け算です。文章作成・資料作成・開発をAIに渡しきった先に最後まで残ったのは、プログラミング力でも資格でもなく、この一番AIっぽくない能力でした。

私自身、この1年で仕事の多くをAIに渡してきました。夜の間もAIが仕事を進めてくれる体制です。それでも 「何を目指して走らせるか」を決める仕事 だけは、AIに渡せませんでした。

具体的にはこういうことです。先月の失注を知っているから、提案の温度を変えられる。部長の稟議の通し方の癖を知っているから、通る稟議が書ける。その環境・分野・属性で「今刺さる提案」ができる力です。

白状すると、私も一度、AIに提案の戦略ごと任せてみたことがあります。返ってきたのは、正しそうなのに刺さらない答えでした。相手の事情を知らないのだから、当然です。

Q02なぜAIは、自社の現場のことを知らないのですか?

LLM(大規模言語モデル)の学習データは、基本的にインターネット上に公開されたテキストが中心だからです。「あの担当者は先月の失注で慎重になっている」といった現場の情報はネットのどこにも書かれておらず、AIは原理的に知り得ません。能力の差ではなく、学習元データの構造の話です。

AIの賢さの土台は、ネットの言葉です。だから、ネットに答えがある種類の仕事では、人の価値が急速に溶けていきます。典型例は、検索で答えが見つかる種類の仕事です。

情報の種類AIとの関係
ネットに答えがある情報一般的なノウハウ・定型文書の書き方AIが得意。人の価値が急速に薄れていく領域
現場にしかない情報先月の失注の理由・担当者の癖・トラブルの収め方誰かが言語化しない限り、AIにとって存在しないのと同じ
ネットに答えがある仕事と現場にしか答えがない仕事の二分図
ネットに答えがある仕事と現場にしか答えがない仕事の二分図

誤解のないように書くと、AIの実力は本物です。ネット上と手元に情報がそろっている仕事なら、相手ごとに合わせた個別対応まで大量にこなします。ただ、その強みの前提はすべて「参照できる情報が存在すること」です。実際、私が現場でAIの精度問題を追いかけると、行き着く先はたいてい同じでした。「その情報を、誰も言葉にしていなかった」。

Q03経験の浅い若手は、AI時代に勝てないのですか?

経験の差がすぐには埋まらないのは事実です。ただし裏返しがあります。価値が経験からしか生まれないということは、経験の市場価値が上がった時代だということです。ネットに答えが載っていない「めんどくさい仕事」こそ、経験の買い時です。

「めんどくさいな」と感じる仕事は、たいていネットに答えが載っていない仕事です。手順が整っていなくて、人との調整が絡んで、検索しても出てこない。だからめんどくさい。だからこそ、AIが代われません。

我慢しろ、という話ではありません。めんどくさい仕事は、経験の買い時 ──値上がりが見えている資産を、若いうちに安く仕込めるという投資の話です。

ただし「嫌い」と「めんどくさい」は別物です。嫌いは、心が拒否しているサイン。めんどくさいは、気が進まないだけで、その先に経験が眠っているサイン。心が拒否する仕事まで耐えて続ける必要はありません。

提案はひとつだけ。今日「めんどくさいな」と思った仕事を、一つだけ引き受けてみてください。

Q04会社に積み上がった現場経験は、AIの成果にどうつながりますか?

現場経験を言葉にして、ゴールとしてAIに渡す──この流れです。失注の理由、顧客ごとの癖、トラブルの収め方はすべてネットに載っていない情報で、これを持っている会社だけがAIを本当に働かせられます。ゴールさえ渡せば走り続ける世代のAIが、24時間それを実行します。

現場経験がゴール設定を経てAIの24時間実行につながる価値連鎖図
現場経験がゴール設定を経てAIの24時間実行につながる価値連鎖図

「うちのベテランは文章なんて書かないよ」という会社でも大丈夫です。いまは、話したことを言葉の資産に変えるコストがほぼゼロになっています。ベテランの話を30分録音するだけでも、AIに渡せるゴールの種になります。

言語化は、思っているより小さく始められます。そして御社の現場経験こそ、AI時代の最大の資産です。

よくある質問(FAQ)

Q. AI時代に備えて、プログラミングや資格を学ぶべきですか?
A. 無意味ではありませんが、価値の中心はそこではありません。その分野で積んだ経験と、相手の立場を理解する泥臭さの掛け算──刺さるゴールを置ける力のほうが、AIが代われない分だけ長く価値が残ります。
Q. 嫌いな仕事も、経験のために続けるべきですか?
A. いいえ。嫌いは心が拒否しているサインで、めんどくさいは気が進まないだけのサインです。買い時なのは「めんどくさい」のほうだけで、心が拒否する仕事まで耐える必要はありません。
Q. AIに任せても成果が出ないのは、AIの能力不足ですか?
A. 多くの場合は違います。現場でAIの精度問題を追いかけると、行き着く先はたいてい「その情報を、誰も言葉にしていなかった」でした。参照できる情報が存在しなければ、AIは力を発揮できません。
Q. 「ゴールさえ渡せば走り続けるAI」とは、どの世代の話ですか?
A. 2026年時点の最新世代のAI(Fable 5など)を指します。夜間も含めてAIを走らせる仕組みづくりは、当ブログの「AIの稼働時間」「ゴール駆動のAIの任せ方」の記事で詳しく解説しています。

AUTHOR

株式会社GembaShift 代表取締役CEO 黛 政隆

黛 政隆(まゆずみ まさたか)

株式会社GembaShift 代表取締役CEO

エンジニア歴20年、PM経験50件超。生成AIの導入を、現場に入って一緒に組む仕事をしています。 この記事の内容は、著者自身が実際に手を動かして業務で検証した実体験に基づいています。

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