議事録AIは、もうみんな使っています。文字起こしも要約も当たり前。でも、その先で多くの人が止まっている場所があります。「調べるAI」止まり、という地点です。
何か起きてから慌ててAIに聞く。お客さんに何か言われてから調べさせる。この使い方は、AIが後追いで動いている状態です。私も最初はそうでした。
ここから一段上がる発想転換が、 「調べるAI」から「準備するAI」へ 。事象が起きる前に、能動的にAIを準備に使う。これだけで商談も会議も景色が変わります。
Q01商談や会議の準備に、AIはどう使えばいいですか?
「事象が起きる前」に使うのが核心です。商談の前、要件定義ヒアリングの前、社内会議の前にAIへ話しかけて、論点や想定問答を先に作っておく。会議の勝負は始まる前にほぼついていて、始まる前の30分にAIを置けるかどうかで決まります。
AIの使い方は3段階で整理できます。多くの人は1と2で止まっています。
- 議事録AI ── 記録を整理するAI
- 調べるAI ── 必要に駆られて使う「後追い」のAI
- 準備するAI ── 事象が起きる前に使う「能動」のAI
数字で見ると、日本のビジネスパーソンは1日約1.9時間を会議に使い、会議準備でいちばん時間を使うのは資料作成で管理職平均36.7分(Acall調査)。つまり多くの人の準備時間は「資料を整える時間」になっていて、「論点を準備する時間」になっていません。これが、決まらない会議の構造です。
Q02「調べるAI」と「準備するAI」は、何が違うのですか?
AIが動くタイミングです。調べるAIは、質問やトラブルが起きてから使う受け身の使い方で、恩恵が「打ち返しの速さ」にしか乗りません。準備するAIは事象の前に使う能動の使い方で、商談の持ち帰りや会議の「決まらない」を減らします。
| 比較項目 | 調べるAI | 準備するAI |
|---|---|---|
| 使うタイミング | 事象が起きてから | 事象が起きる前 |
| 動き方 | 後追い・受け身 | 能動 |
| 得られるもの | 打ち返しの速さ | 商談の持ち帰り減・会議で決まる |
私自身、最近いちばん時間を使っているのが準備するAIです。商談の前、要件定義ヒアリングの前、社内会議の前、朝礼の前。事象が起きる前にAIに話しかけている時間が明らかに増えて、商談で持ち帰りが減り、会議で「決まらない」も減りました。
Q03会議のアジェンダづくりに、AIをどう使いますか?
議題レベルのアジェンダを「論点」まで一段落とさせます。「このアジェンダを論点まで分解してください」とコピペで投げるだけで、5分で終わります。「次期システムの方針について」が「次期システムは内製か外注か(決める)」に変わり、会議が「議論する場」から「決める場」に変わります。
ほとんどのアジェンダは「次期システムの方針について」「予算スケジュールについて」という議題レベルで書かれています。議題レベルには、何を決める会議なのかが書かれていません。だから会議中にズルズル広がります。
- 次期システムは内製か外注か(決める)
- 予算は今期に振るか来期に振るか(決める)
- 営業組織を3チームか2チームに再編するか(決める)

精度を上げる小ネタは、過去の議事録を一緒に貼り付けることです。AIはサンプルを真似るのが得意なので、過去の良い会議を1回分添えると、出力の粒度が組織の言葉に揃ってきます。応用として、商談前に自社のプレゼン資料を貼って「想定問答を3パターン出してください」と頼むのも効きます。
Q04論点を詰めすぎて、会議が逆に進まないときはどうしますか?
AIで一枚絵(インフォグラフィック)を作って持ち込みます。論点リストをそのまま渡して「わかりやすく図解して」と頼むだけで、参加者の理解が一気に揃います。準備するAIは「決める」ためではなく「決めやすくする」ために使うのがコツです。
正直な失敗談として、私も最初は論点を詰めすぎて「想定される結論」までAIに出させて会議に臨み、参加者がついてこられずに会議が止まりました。準備のクオリティを上げすぎて、逆に会議が詰まる。本末転倒です。
- 16:9で出力させると、投影しても画面共有しても見やすい
- お堅い会議なら「ビジネス用途で落ち着いたデザイン」と指定すると、雰囲気が崩れない
論点を「リストで並べる準備」から「一枚絵で見せる準備」に上げる。これだけで、準備したAIの出力が会議の中でちゃんと使えるものに変わります。
Q05毎回の準備に、時間をかけない仕組みは作れますか?
作れます。ChatGPTならGPTs、Claudeならプロジェクト機能で、自分用のお決まりカスタムプロンプトを一度だけ作り、次からは資料を貼って実行するだけにします。これで準備は5分以内。商談準備・社内会議準備・要件定義準備の3つがあれば、ほぼ全部の打ち合わせが回ります。
準備するAIの最大の落とし穴は、準備自体が新しい仕事になってしまうことです。毎回30分かけていたら本末転倒で、結局誰もやらなくなります。テンプレ化は、続けるための設計です。

GPTsを作るときの小ネタは、過去にうまくいった会議の論点リストをお手本として仕込んでおくことです。「こういう粒度で出してね」という見本が中にあると、出力が自分の現場の感覚に揃ってきます。
Q06商談に「動くデモ」を持ち込むのは、現実的ですか?
できる人が増えています。バイブコーディング──AIエディタに会話で指示してプロトタイプを高速で組み上げるやり方──を使えば、商談30分前に事前の要件メモから「動く画面」を作って持ち込めます。スライドで30分説明していたものが、動く画面の3分で伝わります。
私自身、最近こういう動き方をしています。商談30分前、事前にもらった要件メモをAIエディタに渡して「この業務フローで動く画面を作って」と投げる。これを商談で動かすと、お客さんの反応が完全に変わります。「あ、こういうことです!」と先方から言葉が出てくるのです。
正直、誰でもすぐできるレベルではありません。プログラミングの土台がゼロだと、AIエディタの出力を直すのが厳しい場面もあります。ただ、AIエディタの進化が早く、この壁が毎月低くなっているのも事実です。営業・提案担当・PMには、ぜひ踏み込んでほしい領域です。
よくある質問(FAQ)
- Q. アジェンダの論点分解は、どのAIでやればいいですか?
- A. ChatGPTでもClaudeでも、論点分解の精度は変わらないというのが実際に使っての実感です。ツール選びより、「このアジェンダを論点まで分解してください」と投げる習慣を作るほうが先です。
- Q. 議事録AIはすでに使っています。それでは足りませんか?
- A. 議事録AIは3段階の1段目で、記録の整理はできますが、会議が決まらない構造は変わりません。準備の段階でAIを使い、アジェンダを論点まで落とすところまでやると、会議そのものが変わります。
- Q. 会議用の図解は、どう指定すると使いやすいですか?
- A. 2つの指定が効きます。16:9で出力させると投影にも画面共有にも収まりがよく、お堅い会議では「ビジネス用途で落ち着いたデザイン」と添えると派手になりすぎません。論点リストを渡して「わかりやすく図解して」と頼むだけで作れます。
- Q. 準備用のテンプレ(GPTs)は、いくつ作ればいいですか?
- A. 3つで足ります。商談準備・社内会議準備・要件定義準備の3つを作っておけば、ほぼすべての打ち合わせが回る、というのが著者自身の運用です。数を増やすより、過去のうまくいった論点リストをお手本として仕込むほうが効きます。
AUTHOR

黛 政隆(まゆずみ まさたか)
株式会社GembaShift 代表取締役CEO
エンジニア歴20年、PM経験50件超。生成AIの導入を、現場に入って一緒に組む仕事をしています。 この記事の内容は、著者自身が実際に手を動かして業務で検証した実体験に基づいています。