刷新の会議が、決まって途中で止まる。「ここ、触ったら何が起きるか分かる人います?」──その一言で、空気が固まる。私はこの景色を、本当に何度も見てきました。
現場でAIを動かすことを仕事にしている、株式会社GembaShift代表の黛(まゆずみ)です。今日は、刷新したいのに現行が説明できなくて止まっている会社の話です。
人に聞いた話で語りたくなかったので、自分で確かめました。約120万行の基幹コードを、AIに丸ごと読ませた実測の数字 を書きます。
Q01巨大な現行システムを、AIはどこまで読み解けますか?
実測では、約120万行のコードを丸ごと解析にかけて、途中で落ちずに最後まで完走しました。そこから、人が現行を理解し直すのに必要な情報の83%を復元できています(2026年時点の自社実証)。残りの17%と最終判断は、人が仕上げます。

正直、ここまで完走するとは思っていませんでした。「複雑だから無理」が「複雑なものほど任せられる」に変わってきた──その規模を丸ごと相手にして、自分たちの数字で言えるようになりました。
意味で読める。影響範囲をたどれる。怖くて触れなかったものに、ちゃんと光が当たる。ただし、限界も手で掴みました。それは後述します。
Q02「誰も現行を説明できない」状態は、なぜ起きるのですか?
正解が、誰かの頭の中か、動いているコードの中にしか残っていないからです。「設計書? ありますけど、たぶん現物とは違いますよ」が現場の実情で、その状態のまま刷新が何年も宙づりになります。
AIを現場に入れる仕事をしていると、毎回のように同じ壁にぶつかります。刷新の会議で「ここ、触ったら何が起きるか分かる人います?」の一言が出て、止まる。この壁を越えるには、現行を「AIが読める・検証できる形」に変える前工程が要ります。
Q03現行の読み解きは、具体的にどんな作業に分かれますか?
4つです。①依存と影響範囲をたどって一枚の地図にする、②現行の仕様と頭の中の業務ルールを書き出す、③どこを変えたら何に響くか・何を確かめれば「同じ」と言えるかを出す、④どこから手をつけるか順番をつけてAI刷新用の指示書に束ねる。

この重い前工程を、誰でも回せる形にしたのが、私たちの提供するSpecLiftです。ブラックボックスになった既存の基幹を「AIが読める・検証できる形」に変える、AI刷新の前工程を担います。
古いコードを貼ってAIに説明させるだけなら、正直、誰でもできます。でも、その説明が本当に正しいか、何を根拠にそう言っているかは辿れません。ここは依存をたどって「なぜ」まで出すように作りました。対応できるのは、今どきの言語からCOBOLのような年代物までです。
Q04AIによる読み解きの限界はどこですか?
「人が現行を理解し直す・検証する」作業の、だいたい8割の肩代わりまでです。残りの2割と、最終判断──新旧を見比べて「同じだ」と確かめて切り替えるところ──は人が持ちます。100%を機械にやらせる道具ではありません。
自分で読ませてみて確信したことがあります。全部AIに丸投げすれば刷新完了、には絶対ならない ということ。83%という数字の残り17%は、機械任せにせず人が仕上げる場所です。
Q05機密性の高い基幹コードをAIに読ませて、安全ですか?
安全に読ませる作りが前提です。現行には手を入れず読むだけ。自社の環境の中で動かす。何を根拠にどう判断したかが全部ログに残る。読ませた中身を学習には使わない──この条件が揃ってはじめて、一番怖い現行に向けられます。
機能リストとして並べたいのではなく、要は「だから安心して、一番怖い現行に向けられる」という話です。環境がちゃんと守ってくれるから、人は検証という一番大事な仕事に集中できます。
よくある質問(FAQ)
- Q. SpecLiftとは何ですか?
- A. ブラックボックスになった既存の基幹システムを「AIが読める・検証できる形」に変える、AI刷新の前工程サービスです。依存関係の地図化、業務ルールの書き出し、影響範囲と検証観点の抽出、刷新用指示書への束ねまでを担います。
- Q. COBOLのような古い言語にも対応できますか?
- A. 対応できます。今どきの言語からCOBOLのような年代物まで、現行コードを読み解く対象にできます。
- Q. 復元率83%とは、どういう意味ですか?
- A. 約120万行の解析実証で、人が現行システムを理解し直すのに必要な情報のうち83%を復元できた、という自社実測の数字です(2026年時点)。残りの17%は機械任せにせず、人が仕上げます。
- Q. AIに読ませれば、刷新はそれで完了しますか?
- A. 完了しません。読み解きは刷新の前工程であり、AIが肩代わりするのは理解・検証作業の約8割です。新旧を見比べて「同じだ」と確かめて切り替える最終判断は、人が持つ場所として残ります。
AUTHOR

黛 政隆(まゆずみ まさたか)
株式会社GembaShift 代表取締役CEO
エンジニア歴20年、PM経験50件超。生成AIの導入を、現場に入って一緒に組む仕事をしています。 この記事の内容は、著者自身が実際に手を動かして業務で検証した実体験に基づいています。