いま、業務に使っている共有ドライブを開いてみてください。トップ階層に「とりあえず」「例外対応」「特殊」「保留」「あとで整理」「◯◯さん用」──こういう名前のフォルダは、いくつありますか?
3つ以上あった方には、この記事を読む価値があります。ゼロだった方は、たぶん誰かが必死に整理し続けてくれています。
フォルダ名は、現場の健康状態を映す鏡です。3分でできる診断の仕方と、AIを使った現実的な解き方を書きます。
Q01共有フォルダに「とりあえず」フォルダが増えるのは、何のサインですか?
「ルールに収まらない仕事が増えた」というサインです。「例外対応」は定型で捌けない案件が増えたサイン、「◯◯さん用」はその人がいないと回らない領域があるサイン。誰も口に出さなくても、フォルダ名が現場の代わりに叫んでいます。
最初に断っておくと、これはサボった結果ではありません。急ぎのファイルを置く場所がなくて、誰かがその瞬間の最善として「とりあえず」を切った。一人ひとりは何も悪くないのです。
でも半年・1年・3年と経つと、共有ドライブのトップ階層が、会社の業務がいま何に詰まっているかの掲示板になります。とりあえずフォルダは、現場の悲鳴がそのままフォルダ名になったものです。
Q02共有ドライブの健康状態は、どうやって診断しますか?
ツリー表示でトップ階層を3分眺めるだけで読めます。見るのは3つ。命名ルールが揃っているか。「とりあえず」「例外」「特殊」「保留」「あとで整理」が合計いくつあるか。同じ書類の「最新」がいくつぶら下がっているか、です。
- 命名ルールが揃っているか:トップ階層の名前がバラバラなら、その下はもっと荒れている。年号が「2024」「24年」「R6」と混ざる状態が出発点
- 「とりあえず」系フォルダの合計:5つを超えたら、ほぼ確実にエース1人が回している。10を超えたら、その人が辞めた瞬間に業務が止まる体制
- 同じ書類の「最新」の数:主要書類で「最新」「最終」「v2」「本当に最終」「修正版」が3つ以上ぶら下がっていたら赤信号。誰も最新を保証できていない

Q03散らかった共有フォルダを放置すると、どうなりますか?
エース1人が暗黙の地図で吸収し続け、その人の退職と同時に地図が消えます。「最終_本当に最終_修正版」のうちどれを顧客に提出したのか、答え合わせできる人が社内にいなくなり、慌てて立ち上がるシステム導入プロジェクトは、ほぼ間に合いません。
こういう会社の社長に「ファイル管理はどうですか」と聞くと、だいたい「特に困っていない」と返ってきます。嘘ではなく、エースが1人、黙って吸収しているから回って見えるのです。若手の「あのファイルどこですか」に答えるだけで1日20分、30分が消えていきます。
そのエースが退職を申し出た翌日から、共有ドライブを開く回数が急に増えます。引き継ぎを始めて初めて、「とりあえず」の中身の生き死にを判定できる人が誰もいないと気づく。地図は移植できないので、暗黙知の半分以上が退職と同時に消えます。
Q04ファイルの整理整頓は、AIに任せられますか?
任せられるようになりました。ファイルを放り込むだけで、AIが中身を開いて「何の書類か・どの案件のものか・いつ時点か・誰宛か」を読み取り、自動でラベルを貼ります。いま「とりあえず」に積んである古い書類も、後追いで一気にラベリングできます。
これまで、書類を「正しいフォルダに、正しい名前で」置くのは人間の仕事でした。だから雑に置かれた瞬間、その書類は事実上消えていた。いまはAIが裏でラベルを貼るので、エースの頭の中にしかなかった「これは生きてる、これは死んでる」の地図が、全社員に開放されます。
自分の現場で動かして驚いたのは、「先月のA社向け見積の最終版はどれだっけ」というファイル名を無視した聞き方でも、AIが複数フォルダにまたがって関連ファイルを意味で拾い、要約まで返してきたことです。ファイル名がぐちゃぐちゃの「とりあえず」の中で、ちゃんと拾えました。

ポイントは、フォルダ構造はそのままでいいことです。人間がきれいに置き直すのではなく、AIが裏でラベルを貼って、検索できる資産に変えていきます。
Q05全社の命名規則改革や新システム導入では、解決しませんか?
どちらもうまくいきにくいです。全社一斉の命名規則改革は、守った人だけが疲れる構造になってほぼ頓挫します。新システムへの移行は、例外を吸収していた知識がエースの頭の中にあるため、先に知識が消えます。新規システムを作る前に、AIのラベリングで「とりあえず」フォルダを検索できる資産に変えるのが先です。
私も過去、命名規則表を配って強制しようとして毎回失敗してきました。ここで言う「フォルダを潰す」は、消すことではありません。中身に意味のラベルを付けて、誰でも掘り出せる資産に変える、という意味です。
- 共有ドライブのトップ階層を、3分だけ眺める:「とりあえず」系の合計が5つを超えていたら要観察
- 同じ書類の「最新」が3つ以上あるファイルを1組見つける:提出版を答え合わせできるのがエース1人なら、構造のリスクが見えた
- 一番混雑している1フォルダだけ、AIに丸ごと渡してラベリングしてもらう:その日から「ただの墓場」が検索できる資産に変わる
特に3つめは、小さな実証実験から始めて、現場が「操作は何も変わらない」と腹落ちしてから広げるのが結局いちばん速いやり方です。
よくある質問(FAQ)
- Q. ファイル名がぐちゃぐちゃでも、検索できるようになりますか?
- A. なります。AIはファイル名ではなく中身を読んで意味で拾うため、曖昧な聞き方でも複数フォルダをまたいで関連ファイルを見つけ、要約まで返せます。
- Q. 「AIを入れたのに検索で出てこない」のは、なぜですか?
- A. 9割は、そもそも答えが整理・登録されていないことが原因です。だから私が現場に入って最初にやるのは、AIの相談ではなく共有ドライブを開く作業です。
- Q. フォルダを増やしてしまう現場に、注意すべきですか?
- A. 責めないでください。「とりあえず」フォルダは、真面目な人が現実を吸収しようと頑張った証拠です。個人を注意するのではなく、悲鳴を吸収できる設計に変える話です。
- Q. まず何から始めればいいですか?
- A. 一番混雑している1フォルダをAIに丸ごと渡して、ラベリングしてもらう小さな実証実験からです。現場の操作は何も変わらないので、腹落ちを作ってから広げられます。
AUTHOR

黛 政隆(まゆずみ まさたか)
株式会社GembaShift 代表取締役CEO
エンジニア歴20年、PM経験50件超。生成AIの導入を、現場に入って一緒に組む仕事をしています。 この記事の内容は、著者自身が実際に手を動かして業務で検証した実体験に基づいています。